総合第1位は、「ウェブサイトの使いやすさ」「情報の公開度・先進性」両カテゴリで第1位となった政令指定都市の大阪市(http://www.city.osaka.lg.jp/)が獲得した。 特に注目したいのは文章デザインへの細やかな工夫の数々である。例えば「引越」に関する情報をまとめたページでは、「他市区町村から引越してきたときは、転入届を出してください。」のように、話しかけるような文言が使用されている。さらに、ここでは文章中の「転入届」が解説コンテンツへのリンクとなっている。ともすると煩雑になりがちなテキスト情報へのひと工夫に、同市のこだわりが伺える。また、分かりやすさだけでなく、住民、事業者、観光者、行政などで区分された各カテゴリには、それぞれ自治体の公式ホームページにふさわしい、豊富なコンテンツが用意されている。膨大なコンテンツが一貫性のある分かりやすいレイアウトでしっかりと整理された、「使いやすさ」と「情報量」を兼ね備える秀逸な自治体サイトである。
そのほか、第2位の三鷹市(http://www.city.mitaka.tokyo.jp/)や、第7位の大府市(http://www.city.obu.aichi.jp/)など、人口でみれば中規模の都市も上位に多くランクインしている。これらのサイトに共通して言えるのは、CMS(コンテンツマネジメントシステム)によりサイト全体に一貫した操作性を実現しているだけでなく、しっかりとした情報の整理が行われている点だ。例えば、電子申請や施設予約などのオンラインサービスや、入札や法人税などの事業者向け情報へのナビゲーションが1箇所にまとめて表示されている。一見、当然の事のようにも思えるが、コンテンツによって担当部署が分かれているなど、自治体特有の組織上の問題もあり、実践されているサイトは意外にも少ない。
コンテンツ面での先進的な取り組みも、上位サイトの共通点である。特にFAQや問い合わせフォームのような、ユーザーの疑問や不安を解消するコンテンツの充実ぶりが印象的だ。もっとも、サイト情報の整理が行えていない自治体サイトにこそ、早急に実現されたいコンテンツである。また、パブリックコメントやアンケートの受付に入力フォームを採用しているサイトも増えている。ただ情報を発信するのではなく、ネットの双方向性を利用した広聴活動は注目すべき取り組みといえよう。
ただ、残念ながら自治体サイトがどれだけ使いやすくとも、それらにぶら下がる行政オンラインサービスまで、シームレスな環境で利用できるサイトは皆無といってよい。さらに、これら外部コンテンツへの導線にも配慮がなされていないケースが多い。事前情報なしで突然ページが立ち上がる電子申請サービスや、利用方法が全く解説されていない施設予約サービスなどはその一例だ。バナーなどのリンクから突然電子申請サービスにジャンプする事例は、ノミネートサイトであっても半数近くにのぼった。図書館や施設予約、SNSなどが統合された厚木市(http://www.city.atsugi.kanagawa.jp/)の「マイタウンクラブ」のような画期的な事例もあるが、まずは初心者のユーザーを驚かせない、惑わせない工夫が求められる。電子申請であれば、「何が出来るのか」「どうやって利用するのか」などの概要情報を事前に示す必要があるだろう。ウェブサイトが"びっくり箱"とならないよう、よりユーザーの立場にたったナビゲーションへの配慮を期待したい。
(このレビューは2010年3月10日までの各自治体サイトに基づいています)