地銀等におけるウェブサイト改善の動きは引き続き活発です。特に、アフターコロナの現在においては、住宅ローンやリスク性商品の販売、NISAへの加入等において、来店、問い合わせやセミナー参加を促すための情報掲載や動線の確保、またオンラインで完結する予約システムの搭載等が進んでいます。
こうしたマーケティング的な要素を含むウェブサイトの取り組みについては大きな前進が見られる一方で、ナビゲーション、パフォーマンス(サイトの表示速度)といったウェブサイトとして期待される一般的かつ基礎的な要素については、上場企業のコーポレートサイトや一般的な大型ECサイト他と比較した場合、残念ながら大きく劣後していると言わざるを得ません。
地方銀行は多様な商品・サービスを提供しており、さらに銀行によっては多くのキャンペーン等を展開しているため、ウェブサイトに掲載する情報が非常に多岐にわたります。その結果として、ユーザー側からすると目的の情報を見つけにくい状況が発生しています。必要な情報にたどり着くために多くのページを遷移しなければならない複雑な階層構造となっているケースや、ページごとにナビゲーションやデザインが異なるケースも散見され、ユーザーはサイト内で迷子になりやすい状態です。こうした課題に対しては、情報の種類や重要性等に応じた適切なサイト構造に見直し、ファインダビリティ(情報の見つけやすさ)を確保したナビゲーションやデザインを採用することが解決の糸口となるでしょう。
また、多くの地銀のウェブサイトにおいて、アクセシビリティへの配慮が強く期待される状況です。なかでも、色のコントラストについては重要な課題として挙げられます。比較的シニアな年齢層がユーザーとして想定される地銀のウェブサイトにおいては、視認性は特に重要なポイントと言えます。
個人ユーザー向けに情報発信するウェブサイトにおいては、効率的なインデックス化や検索エンジンからの評価向上に役立つXMLサイトマップ(ウェブサイトのURL情報を検索エンジンに伝えるためのファイル)の実装も一般的に行われる対策の1つであり、ウェブサイトの利便性と集客力を強化することが期待できます。XMLサイトマップの整備により、ユーザーは必要な情報にアクセスしやすくなります。しかし、XMLサイトマップを整備している地銀のウェブサイトはまだ少数派となっています。
「Gomez地方銀行サイトランキング2024」の総合1位は、総合得点7.65点を獲得した千葉銀行となりました。カテゴリ別では、「機能性・使いやすさ」で12位、「商品・サービス情報の充実度」で1位となりました。
同行のウェブサイトは、トップページの掲載情報は多いものの、各カテゴリやメニューへの動線を明確にしているため、ユーザーは求める情報を探しやすいでしょう。「お問い合わせ」「よくある質問」といったユーザーをサポートするメニューが常駐しており、自動応答のチャットツールも搭載しています。特に、商品やサービスに関連した情報掲載が充実している点が際立っていますが、個々のページ情報の有無だけではなく、商品やサービスのページから「来店予約」「相談」「申し込み」といったユーザーの次のアクションを促す動線等が確保されている点が高い評価を獲得した理由の1つです。住宅ローンの紹介に動画を活用するといった取り組みも見られます。
総合2位は、池田泉州銀行となりました。カテゴリ別では、「機能性・使いやすさ」で17位、「商品・サービス情報の充実度」で2位となりました。
投資信託や外貨預金といったリスク性商品やNISA等のサービスについて、初心者の理解を助ける啓蒙コンテンツがとても充実しています。こうした情報は、構成や見やすさにも配慮されています。また、一般的に地銀サイトで搭載されることが多い「住宅ローンシミュレーション」だけでなく、「相続税シミュレーション」「税制優遇シミュレーション」といった多様なシミュレーション機能も搭載しているのも同行ウェブサイトの特徴です。
総合3位は「南都銀行」となりました。カテゴリ別では、「機能性・使いやすさ」で7位、「商品・サービス情報の充実度」で5位となっています。
ナビゲーションに工夫が見られるウェブサイトです。銀行サイトで一般的に採用されることが多い「ためる」「ふやす」といった目的別の動線以外にも、商品別やライフステージ別の動線も提供しています。また、充実したフッターメニューからも、ユーザーは情報が探しやすくなっています。支店の店舗情報ページには、「来店予約」への動線を確保している点も、ユーザーのニーズやリアルなアクションを想定したサイト設計と言えるでしょう。