IRサイト一斉調査(2):IR資料の「倉庫」にしないために必要なこと

2012年12月26日

前回に引き続き、IRサイト一斉調査結果を概観してみよう。今回は、PDF等によるディスクロージャ資料以外で、企業を手早く理解してもらうためのハイライト系コンテンツを取り上げる。

下のグラフは、事業内容や業績のような企業の「現在」の姿を、そして、「将来」に向けた経営計画やリスク要因を、ユーザーにざっくりと知ってもらうために重要と考えられる各種コンテンツの掲載率を示したものである。具体的には、以下の4つである。

(1)
個人投資家やはじめてサイトを訪れるユーザー向けに「何をしている会社なのか」という切り口から会社や事業を紹介するためのコンテンツである「個人投資家向けサマリ(等)」コンテンツの有無
(2)
売上高や利益、各種財務指標の過去数年分のトレンドを視覚的に表現した「業績ハイライトグラフ」の有無
(3)
中長期の経営計画を核とし、将来に向けた具体的な目標やアクションプランをサマリした「経営方針サマリ」ページの有無
(4)
経営や業績に影響を与えるさまざまな要素を知らせる「事業等のリスク」ページの有無

各種サマリー情報の掲載状況

ご覧のとおり、業績ハイライトについては全体の6割近いサイトで掲載されているものの、それ以外の各サマリ情報は軒並み1~2割程度となっている。これは、知識や経験の異なる多彩なユーザーに対して企業の理解を促すためのコンテンツ群が不足していることを示唆しており、大部分のIRサイトがPDFによるIR資料の「倉庫」の域を未だに脱し切れていない現実が垣間見える。

ただし、「個人投資家向けサマリ等」「経営方針サマリ」「事業等のリスク」に関する各サマリコンテンツは、掲載率こそ低いものの、コンテンツの増加・改善スピードが他のコンテンツより高いこともまた事実である。

詳細な事業内容や経営方針に関する情報は、企業サイトでなければ入手できない情報の類である。ユーザーの関心も高いコンテンツだ。制度的なディスクロージャ資料のみならず、企業の現在の姿や将来に向けた取り組みをわかりやすく説明し、ユーザーに企業をもっと知ってもらうための工夫が求められる。どのような会社なのか、将来的にどこに向かうのか――。段階的に企業のことを理解してもらい、投資家との長期的な関係を築くための礎となるコンテンツこそがまず求められているのではないだろうか。