2012年12月3日
いよいよ今年も残すところ1ヶ月を切った。毎年IRに対する表彰や調査結果がさまざまな機関から公表されるこの季節は、Gomezでも次回の「IRサイトランキング」に向けて調査部隊が動き出す。そこで今回は、毎年恒例の「IRサイト一斉調査」によって得られたいくつかの結果に基づいて、直近のIRサイト事情を概観してみよう。
この調査は、2012年11月時点で国内証券取引所に上場している全企業が展開するIR(投資家向け情報)サイトを対象に行われた。今回の調査対象は3,510サイトである。昨年同月の調査対象が3,570サイトであったことから、昨年比60サイトの減少となったことになる。新規上場の動きは加速しているものの、上場を廃止する企業もまた多い現実が伺える。
そして、2012年4月以降にウェブサイトのリニューアルが行われたのは(確認できたものは)280サイトほどである。すなわち調査対象サイト全体の約8%が自社サイトを刷新したことになる。引き続き、ウェブサイトに対する高い改善意欲が伺える。
では、本論に入ろう。まずは、投資家やアナリストとのコミュニケーションにおいてもっとも重要な決算説明会(およびカンファレンス・コール)に関連する情報開示について概観してみたい。IRサイトにおける関連主要コンテンツの掲載状況は、以下のとおりであった。
決算説明会関連資料の掲載状況
説明会資料や補足スライドは、56.8%のIRサイトに掲載されている。一部企業で掲載(更新)をやめてしまうところが散見されたものの、掲載を開始(再開)する企業もあり、掲載企業数、掲載率とも微増となっている。この資料をもとに行われる説明会やテレカンの音声・動画配信を行うIRサイトは全体の14.4%となっており、比較的安定した掲載率を維持している。
また、上記資料を補足するいくつかのコンテンツ掲載も進展中である。そのうちのひとつが、説明会プレゼンターの発言を文章に起こした、いわゆる「説明会スクリプト」。純粋にテキストのみの公表、スライドのノート機能を使ったコメント入り資料など、いくつかの開示形式がある。掲載率は全体の2.5%と微々たるものではあるが、掲載サイトは少しずつ増えている。他方、プレゼン後の質疑応答を文面化した「説明会Q&A」もあり、全体の4.0%のサイトが掲載している。こちらは、今年新たに掲載をはじめたサイトが比較的多かったようだ。
これらを活用することで、たとえ説明会に参加できなくとも、参加者に近い情報を得られるようになってきている。インターネットがフェアな情報開示に貢献していることが伺える取り組みである。
このタイトルは、昨年のIRサイト一斉調査報告時のものである。さて、この流れは継続できているのだろうか。下記の図は、アニュアルレポートのPDF版とHTML版の掲載率をまとめたものである。
アニュアルレポート(PDF/HTML)の作成・掲載状況
まず、PDF版については、前回と同率9.8%となっている。しかし、調査対象サイトが減少しているため、掲載企業「数」は微減している。残念ながら、費用対効果などの側面から、作成・公開をやめてしまう例が、前回同様、散見された。
他方、HTML形式によるレポーティングで、IRサイト上でコンテンツをスムーズに閲覧できる「オンラインアニュアルレポート」。こちらは前回比微増の0.9%。社数ベースでいえば前回比で10社超の増加、採用サイトは30社を超えてきた。
(※ちなみに、ここでわれわれがHTML形式と呼ぶものには、レポートの各ページをJPEG等の画像形式にして貼り付けただけの、いわゆる「JPEG形式」は含まれていない。)
オンライン形式のレポートを採用することで、一年間の業績や経営計画の進捗、事業環境などの各種パフォーマンスに加え、ガバナンスやCSRに及ぶ、さまざまな経営活動の成果をワンストップでスムーズに参照することができる。さらにレポートサイトの情報構造やコンテンツを工夫することで、独自性を発揮した情報づくりもやりやすい。タブレットでの利用を想定したページデザインを採用すれば、くつろいだ利用シーンでの閲覧にも対応できるだろう。
得てして形式的で、閲覧するのも理解するもの難しく、そのうえ「堅い」印象を持たれてしまうIR資料に対する敷居を下げる効果も期待したくなる取り組みである。