政府機関保有サイトパフォーマンスランキング

デジタル庁の発足と省庁サイトの管理

デジタル・ガバメント関係閣僚会議(議長:菅義偉首相)が2020年12月21日に開催され、国の情報システムを統括するデジタル庁の基本方針が決定されました。デジタル庁は内閣直属の組織として、2021年9月1日に発足が予定されています。
これに伴い、政府のIT政策の基本理念や重点計画を定めたIT基本法(高度情報通信ネットワーク社会形成基本法)も、初めて全面的に見直され、中央官庁は、国を形作る上で必要な行政情報(住民情報や土地、法人情報など)のシステム構築・運用を、各行政機関では、各々重要なシステムを自ら整備する役割をそれぞれ担うこととなります。
2020年12月現在、当社の調査によればgo.jpドメインは381サイト存在しており、デジタル庁発足に向け、今後は統合化がはかられることとなりそうです。
今回これら381サイトにつき、Webサイトパフォーマンス(表示速度・稼働率等)の観点から、当社のパフォーマンス管理サービスDynaTraceを利用して、全般的に調査を行いました。 Webサイトの表示速度は、利用者にとってアクセスのしやすさをもたらす重要な要素の一つです。公的な政府機関保有サイトにおいては特に気を付けるべきことと思われます。

政府機関保有サイトのパフォーマンス傾向

当社が推奨する表示速度である2秒以下を達成していない政府機関保有サイトは、351件中57件でした。このうち、4秒以上かかっているサイトが24件であり、10件が、独立行政法人である国立病院機構および各医療センターとなっていました。
国立病院機構のサイトが14.8秒と最も遅く、岩国医療センターが11.3秒、四国がんセンターが10.4秒と表示に10秒以上要するサイトが続きます。
これら国立病院機構関連サイトは、2019年から続けてドメインを変更の上、リニューアルしたサイトで、決して古いものではありません。新型コロナウィルスの感染拡大の影響もあるかもしれませんが、だからこそサイト表示速度が大事といえます。
また、表示速度が1秒未満であった高速なサイトは250件でした。
傾向としては、サーバーの処理や通信量が相対的に小さく済む静的サイト(HTMLサイト)が多く見受けられました。
静的サイトは、サーバー通信量が少ないため、一般的にページ速度が早くサーバーダウンも起こりにくく、セキュリティ管理も容易です。
その一方で、情報のリアルタイム性やアクセスユーザ毎の情報の切り替えができず、ユーザが必要とするサービスを提供できないデメリットがあります。
現在の政府機関管理サイトは、管理はしやすいものの、ユーザにとって有益な情報を提供できていないといえる可能性もあります。
先の、国立病院機関関連サイトは、リアルタイム性やアクセスユーザ毎の情報切り替えが可能な動的サイトですが、表示速度の監視、管理は不十分でした。
アクセスユーザのためのサイトであれば、ユーザにとって必要な情報を常時提供し、適切な管理のもと表示速度やセキュリティの対策を行っていくのが好ましいと言えます。

  • サイト名
  • 表示速度
    (秒)

【測定条件】
測定ツール  :Dynatrace Saas
測定拠点   :東京(AWS)
測定期間   :2020年12月24日〜12月25日
測定間隔   :30分毎

政府機関保有サイトの管理状況の傾向

SSL未導入

最も目立ったのは、SSL未導入サイトの多さです。48サイトが該当し、11省庁の一つである総務省や統計局、国民生活センターも含まれます。
アクセスボリュームもさることながら、国民の安全を守る政府機関において、個人情報保護の観点の欠落は、情報漏洩、なりすましを引き起こす致命的なリスクと言えます。

運営・管理の放置

SSL対応は行っているものの、サイト運営が滞っているサイトも多くみられます。情報更新はされず、5年、10年リニューアルを行っていないサイトも見受けられます。
今後、これらのサイトは廃止、統合されていくことでしょう。しかしながら、統合されたとして、現状の放置、放棄された状態で、運営面で問題は起きないのでしょうか。

サイトの統合、廃止による案内不備

サイトの統合、廃止の場合、サイトをリダイレクトさせたり、新しいURLを掲示し誘導するなどの案内は必須です。企業サイトであれば必ず行われることが、政府機関では行われていません。
これらには、「物資調達・輸送調整等支援システム」(被災地へ支援物資の迅速供給を支援するためのシステム)など、非常時の緊急性が求められるシステムも含まれます。
古いサイト情報もインターネット上に残り、有事の際、サイトが見つからない状況も想定できます。
期限付き事業である場合を除き、管理省庁サイトへリダイレクトさせ、サイト統合、廃止の案内を出すことが、政府サイトとして求められます
政府機関サイトの統合の際には、統合化と合わせその後の運営についての設計も必要と言えそうです。

ランキング下位サイト(遅いサイト)の状況

全般的に、画像の最適化(サイズ、読み込み順など)がネックなっているケースが散見されます。表示速度を意識したコンテンツチューニングができてないための表示劣化と思われます。
また、以前からリニューアルしていないシンプルな静的サイトの方が、最近リニューアルしたサイトより早いというのは省庁サイト全般的な状況といえます。
ITダッシュボードや政府広報オンラインのサイトは比較的最近のリニューアルですが、パフォーマンスを意識した対処はされていない模様です。

国家公安委員会webサイト(警察庁)

時折、特定コンテンツの遅延が発生し(タイムアウト)、その計測結果が平均に反映され、遅いランキング結果となっています。この特定遅延がなければ比較的早い部類です。
表示速度1秒前後と、60秒前後の2つのベースラインが存在する。これが表示速度平均値を押し上げています。
後者のタイミングでは、特定コンテンツ(https://www.npsc.go.jp/siteopen/AccesslogOut.do)の処理遅延が発生しており(Requesttimeが約60秒)、表示遅延の原因となっています。
計測期間中の遅延発生頻度は約40%と高く、リアルユーザへの影響も懸念されます。

地域医療機能推進機構WEBサイト

ほぼ全ての画像コンテンツにおいて表示処理待ちが発生しており、表示順の最適化が図られていない状況です。この影響によりファーストビューの表示が遅くなりユーザー体感の悪化を招いている可能性が高いです。
また時折、複数の非圧縮ファイル(js,css)の処理遅延が発生し、表示処理完了に40〜50秒かかっている。通信環境が良くない場合、アクセス数が増加している場合に、ページ表示に同等の時間を要したり、あるいはタイムアウトにより画面を表示できない状況が想定できます。

国立病院機構((独)国立病院機構)

コロナ禍の影響でアクセスが増えている背景があると思われます。また、hosp.go.jpを共有するサイト(医療機関)は全般的に遅い傾向です。
HTMLドキュメントのロードにおいて、常に1秒程時間を要しています。
ほぼ全てのコンテンツにおいて表示処理待ちが発生しており、表示順の最適化が図られておらず(クライアント処理)、また約半数の画像コンテンツのResponse timeに数秒を要しており不安定な状況です。

岩国医療センター - ホーム

ほぼ全てのコンテンツにおいて表示処理待ちが発生しており、表示順(クライアント処理)の最適化が図られていません。また約半数の画像コンテンツのResponse timeに数秒を要しており不安定な状況です。
※独立行政法人国立病院機構 四国がんセンター(shikoku-cc.hosp.go.jp/hospital/)や独立行政法人 国立病院機構 信州上田医療センター(shinshuueda.hosp.go.jp)など、hosp.go.jpドメインに設置されたサイトは同じ状態が見受けられます。

衆議院Webサイト

コンテンツ量、サイズともに小さいですが、画像のResponse Timeに時間を要しており、画像ファイルの取得方法を見直すことでResponse Timeの改善が期待できます。
さらに特定の画像表示が画面表示と同等の時間を要しており、この画像の対策で表示速度の改善が見込めます。

ITダッシュボード

GoogleAPIモジュールの読み込みで400エラーが発生し、定常的な遅延の要因となっています。
ブラウザ(計測ブラウザはChrome)固有のエラーの可能性もありますが、Chromeはサポート対象と記載があり、同サイトのコンテンツ内容からもChromeアクセスは少なくないものと推測されます。
5秒あたりが最も早いベースラインであるが、上記エラー解消により数秒は速くなる可能性があります。
また、20〜30%程度は、5秒のベースラインを超えていますが、トラッキング用js(https://www.piwik.itdashboard.go.jp/matomo.js)のTCP、SSL接続処理で時間を要しており、接続サーバーの状態やスペックを確認する必要があります。

政府広報オンライン

複数の非圧縮ファイル(js,css)に1.5〜2.5秒ほど時間を要しており、これが表示速度、の定常的な遅延要因となっています。
また、ほぼ全ての画像コンテンツにおいて表示処理待ちが発生しており、表示順の最適化が図られていない状況です。
この影響によりファーストビューの表示が遅くなりユーザー体感の悪化を招いている可能性が高いです。

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