投信運用会社サイトランキング

総評

金融庁が掲げる「資産運用立国実現プラン」により、日本の資産運用業界には大きな変革が求められています。インベストメントチェーンの残されたピースとして、資産運用業者にはこれまで以上に透明性と顧客への説明責任を重視した運用が望まれ、さらに顧客との良好な関係構築も期待されています。こうした社会的な要請や期待に対して、ウェブサイトは欠かせないツールとなります。投信運用会社が適切な情報をわかりやすくユーザーに向けて情報発信することで、より多くのユーザーの適切な投資判断を支援することが可能となります。

本ランキング調査によると、各社のウェブサイトでは、全社的な運用体制に加えて、商品別にファンドマネージャー(運用責任者)のメッセージ、運用担当者の経歴といった詳細情報を積極的に掲載するケースが増えています。

また、本調査対象の40社のうち、全社的な投資哲学を掲載する投信運用会社は30社(達成率75.0%)、議決権行使ガイドラインを掲載している投信運用会社は29社(同72.5%)、企業との対話に関する方針を掲載している投信運用会社は16社(同22.9%)となっており、社会的な期待を受けて、個別の商品情報以外にも投信運用会社としての方針をウェブサイトで明確に発信する機運が高まっていると言えるでしょう。プロダクトガバナンスに関する詳細な情報掲載を行っている投信運用会社も、すでに7社となっています(同17.5%)。

こうした積極的な情報発信が進む一方で、ユーザーの商品選別の際に重要となるコスト、リスクやパフォーマンスデータを分かりやすく掲載している企業は少なく、ユーザーの適切な投資判断を支援するウェブサイトとしての情報発信は道半ばと言ってもいいでしょう。例えば、運用管理費用(信託報酬)や購入時手数料(上限)といったコストは、目論見書(PDF)には掲載がありますが、商品概要のページ(HTML)にわかりやすく掲載している投資運用会社は半数以下です。また、多くの投信運用会社のウェブサイトでは、自社が提供する個別の投資信託の検索や絞り込み機能を提供していますが、運用管理費用(信託報酬)別に絞り込みや並べ替えができるのは、40社中1社しかありません(同 2.5%)。

こうした投信運用会社のサイト傾向から、多くのユーザーは、情報をより確認しやすい証券会社や銀行等の販売会社のウェブサイトで情報収集や投資判断を行うことが一般的となり、結果として投信運用会社のウェブサイトの検索結果も下位にとどまりがちです。これは、投信運用会社にとって大きな機会を逃していることを意味します。資産運用立国の実現に向けて、投信運用会社は、ユーザーの投資判断を支援する情報発信の場として自社サイトの総合的な価値を高めていく必要があるでしょう。

上位企業の特徴

総合第1位は、野村アセットマネジメントが獲得しました。
野村アセットマネジメントのウェブサイトは、ナビゲーションを主体とするユーザビリティやアクセシビリティに優れており、豊富で多様なコンテンツを掲載しながらも、ユーザーが求める情報を見つけやすいサイト構成・デザインです。

また、トップメッセージ、CIOや各ファンドマネージャーの経歴やインタビュー紹介も豊富で、運用体制について積極的で具体的な情報発信をしています。トップページファーストビューには、「ファンド・レビュー」への動線を設け、プロダクトガバナンスに関する考え方や詳細で充実した「ファンド・レビュー・レポート」(PDF)を掲載しています。

高い知名度を背景に、関連ワードでの検索結果にも上位にランクインしています。

総合第2位は、アセットマネジメントOneとなりました。

アセットマネジメントOneのウェブサイトでは、コーポレートカラーの一色であるブルーを上手く活用したアクセシビリティに優れたデザインを採用しており、グローバルナビゲーションもわかりやすいタイトル・構成でユーザーを悩ませません。また、「お気に入りファンド」「ファンド検索」といった2つのメニューがフローティング方式で常設されており、個別のファンド情報を調べたい、比較したいというユーザーのニーズに応えるナビゲーションを提供しています。

資産運用会社としての情報発信も充実しており、「責任投資への取り組み」と称する情報配下では、エンゲージメントや議決権行使等について考え方や実績を具体的に紹介しています。

総合第3位はニッセイアセットマネジメントとなりました。

ニッセイアセットマネジメントのウェブサイトの大きな特徴として、ファンドの検索機能や個別のファンド情報が充実していることが挙げられます。同社が提供するファンド検索機能では、手数料や運用実績も含む多様な表示項目を、ユーザーが自分のニーズにあわせてカスタマイズすることができるため、ユーザーは自分の投資方針や条件にあう商品をより見つけやすくなります。また、個別のファンド情報ページでは、タブ切り替えを活用して商品概要から投資リスク、データ、レポート等を見やすく配置しています。