2020年12月21日
すべての国内の上場企業は株主・投資家向けのウェブサイトを持ち、財務情報や適時開示情報や株主総会および株主向けの諸手続きに関する情報を掲載している。株主・投資家の側でもそれを参照する傾向があり、ウェブサイトにおけるその投資判断を左右するものとなっているのが実情だ。
ところが、国内における多くの企業は最低限の情報掲載にとどまっている。先進的な情報開示を行い、積極的なIR活動をウェブサイトを通じて行っているのは一部の企業なのだ。今回は、その一部の優秀な企業が現在どのようなことに気をつかってIRサイトの運営をしているかを紹介してみたい。
2020年における大きなトレンドはESG情報の強化だ。世界的な気候変動への取り組みや、社会における人権問題、企業価値の意義の見直し機運などを背景に、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)に配慮した経営を行うことはは、企業の成長にもつながるとされている。
2020年のGomez IRサイトランキングのノミネート企業(368社)において、「持続可能な開発目標(SDGs)」に関する具体的な取り組みをHTML形式で掲載していたのは183社(49.7%)となり、2019年における130社を大幅に上回った。マテリアリティ(重要課題)についても、既に過半を超える198社(53.8%)がウェブサイトに掲載している。以前はCSRやサステナビリティがウェブサイトのメニューにも入っていない企業が多かったが、そこを企業情報やIR情報と並列ととらえ、メニューの一つに組み込むことで企業として積極的にESGに取り組む姿勢を示している。
2020年では新型コロナウイルスの感染拡大による影響で社会的に関心が高まった項目について、各企業の方針や実施状況に関する情報掲載がすすんでいる。ノミネート企業(368社)において、「BCM(事業継続マネジメント)もしくはBCP(事業継続計画)」について具体的な記載を行っている企業は、2019年から15社増加し116社(31.5%)となった。
また、「テレワーク」について具体的な方針を掲載した企業も64社(17.4%)となり、先進的な取り組みが見受けられる。一方で、先行きが不透明な経済環境となったことで中期経営計画の掲載を取りやめたり、統合報告書の掲載延期といった影響も見られた。
新型コロナウイルスの感染拡大により、例年通りの株主総会や決算説明会の開催が難しかったため、これらを代替・補完するための手段として、動画の活用が広がった。株主総会は116社(31.5%)、決算説明会は214社(58.2%)が動画配信を実施しており、いずれも増加傾向だ。
新型コロナウイルスの感染拡大は余談を許さない状況となっており、今後も企業経営に与える影響が大きいと思われるが、大切なのはそういった環境の変化をいち早く経営に取り込み、それを積極的にウェブサイトを通じて開示していく姿勢である。
(ゴメス・コンサルティング 森澤 正人)