「IRサイトランキング2013」の総括(1)業種別・市場別で見るノミネート&優秀企業の動向

2013年04月25日

いわゆる「アベノミクス」への期待感によって活況な株式市場が続く中、2013年版の「Gomez IRサイトランキング」は発表された。前回とは打って変わって、明るい兆しが見え始めた環境での発表となったわけだ。株式市場がどんな環境にあっても、株主・投資家に対する情報提供は続く。そこで今回のIRレポートでは、前回調査時からIRサイト全般にどのような改善や変化が見られたかを総括してみたい。

予選調査対象サイト数とノミネート数は過去最低を更新

当社が行うIRサイトランキング調査では、全上場企業を対象にした「予備調査」をランキング(本調査)に先立って行っている。これは、一定水準以上のクオリティをもつIRサイトを選定することを目的としていて、IRサイトに最低限掲載されるべきコンテンツ(財務・決算、企業・経営の両面)、および、最低限のユーザビリティを確保するための諸施策から構成される20項目ほどのチェックリストにもとづいて行われている。

2013年3月調査では、この予選調査の対象は3,502サイトとなった。前回比で33サイト減少し、過去最低となった。また、今回は近年のIRサイトの品質改善を考慮し、予選調査のハードルを少し上げさせていただいた。その影響もあり、予選を通過したノミネートサイト数は502サイトとなり、前回比で148サイトの大幅減となった。

業種別ノミネートサイト数の内訳は、以下のとおりである。

表1 業種別ノミネート数の内訳
業種 2012年 2013年 (前期比)
水産・農林業
3
2
▲ 1
鉱業
4
4
0
建設業
19
23
4
食料品
29
24
▲ 5
繊維製品
7
5
▲ 2
パルプ・紙
4
3
▲ 1
化学
33
29
▲ 4
医薬品
19
16
▲ 3
石油・石炭製品
7
6
▲ 1
ゴム製品
5
5
0
ガラス・土石製品
3
4
1
鉄鋼
7
6
▲ 1
非鉄金属
12
12
0
金属製品
11
8
▲ 3
機械
36
29
▲ 7
電気機器
65
52
▲ 13
輸送用機器
20
15
▲ 5
精密機器
11
11
0
その他製品
18
14
▲ 4
電気・ガス業
14
13
▲ 1
陸運業
10
7
▲ 3
海運業
4
3
▲ 1
空運業
1
1
0
倉庫・運輸関連業
5
3
▲ 2
情報・通信業
85
55
▲ 30
卸売業
37
30
▲ 7
小売業
35
21
▲ 14
銀行業
21
16
▲ 5
証券・商品先物取引業
10
8
▲ 2
保険業
7
8
1
その他金融業
15
11
▲ 4
不動産業
23
16
▲ 7
サービス業
70
42
▲ 28
合計
650
502
▲ 148

そして、市場別ノミネートサイト数の内訳は、以下のとおりである。

表2 市場別ノミネート数の内訳
市場 2012年 2013年 (前期比)
東証1部(大証1部)
513
437
▲ 76
東証2部
26
10
▲ 16
ジャスダック
84
45
▲ 39
マザーズ
25
9
▲ 16
その他
2
1
▲ 1
合計
650
502
▲ 148

132社を「IRサイト優秀企業」に選出―うち新規・再選出は18社

予選調査が終了すると、本調査へと進む。これは、予選調査を通過したノミネートサイト(今回は502サイト)を対象に、290項目から構成されるスコアリングモデルを用いてさまざまな角度から評価を行うものである。このスコアリング調査の結果、ランキングができあがる。この結果から、総合得点6.00以上(上限は10.00点)となったサイトならびにその運営企業を「IRサイト優秀企業」として選定させていただいている(優秀企業は、6.00~6.99点を「銅賞」、7.00~7.99点を「銀賞」、8.00点以上を「金賞」と、スコア水準に応じてランク分けされる)。

今回、この「IRサイト優秀企業」は132社となり、前回比で8社の減少となった。うち、新規上場やサイト改善による新規(および再)選出サイトは18サイトあり、改善意欲が高い企業が多いことがうかがえる。逆に上場廃止を含む脱落は26サイトであった。

(※ちなみに「IRサイトランキング」は、インターネット環境の変化やトレンドなどを考慮し、毎年調査項目の一部を入れ替える。言い換えれば、年々評価のハードルが少しずつ上がっていく建て付けになっている。その結果、前回調査時からサイトに何の変化も改善もなければ、スコアは減少傾向をたどることが多い)

「IRサイト優秀企業」を業種別に見たものが下表である。注目すべきは、ゴム製品、金属製品だ。今回、両業種から初の優秀サイトが登場した(横浜ゴム、LIXILグループ)。また、精密機器、不動産業では優秀サイトが2サイトずつ増加している。

表3 業種別IRサイト優秀企業の内訳
業種 2012年 2013年 (前期比)
水産・農林業
1
1
0
鉱業
1
1
0
建設業
0
0
0
食料品
7
6
▲ 1
繊維製品
2
2
0
パルプ・紙
0
0
0
化学
10
10
0
医薬品
7
6
▲ 1
石油・石炭製品
3
3
0
ゴム製品
0
1
1
ガラス・土石製品
2
0
▲ 2
鉄鋼
0
0
0
非鉄金属
4
2
▲ 2
金属製品
0
1
1
機械
6
6
0
電気機器
22
21
▲ 1
輸送用機器
5
6
1
精密機器
2
4
2
その他製品
4
2
▲ 2
電気・ガス業
2
2
0
陸運業
2
3
1
海運業
3
2
▲ 1
空運業
0
0
0
倉庫・運輸関連業
0
0
0
情報・通信業
16
13
▲ 3
卸売業
9
9
0
小売業
5
5
0
銀行業
4
5
1
証券・商品先物取引業
4
3
▲ 1
保険業
6
6
0
その他金融業
3
1
▲ 2
不動産業
5
7
2
サービス業
5
4
▲ 1
合計
140
132
▲ 8

市場別の内訳は、以下のとおり。ジャスダック、マザーズは前回の水準を維持している。また、東証2部上場企業から2年ぶりの優秀サイト(JFEシステムズ)が選定されている。

表4 市場別IRサイト優秀企業の内訳
市場 2012年 2013年 (前期比)
東証1部(大証1部)
135
126
▲ 9
東証2部
0
1
1
ジャスダック
4
4
0
マザーズ
1
1
0
その他
0
0
0
合計
140
132
▲ 8

そして、金賞、銀賞、銅賞の内訳は以下のとおりとなった。

表5 ランク別IRサイト優秀企業の内訳
優秀企業内訳 2012年 2013年 (前期比)
金賞(8.00以上)
10
10
0
銀賞(7.00以上)
37
36
▲ 1
銅賞(6.00以上)
93
86
▲ 7
合計
140
132
▲ 8

次回は、各評価カテゴリ、およびそれらを構成する詳細な評価クラスターである「サブカテゴリ」ごとの評価を通じて、IRサイトならびにウェブIRの全体的なトレンドを見てみることにしたい。