株主総会情報の開示が大幅改善!:IRサイト一斉調査

2010年11月18日

今年もIRサイト一斉調査が終了した。この調査は、来春に発表を予定している「IRサイトランキング2011」の予備選考調査を兼ねたものだ。調査期間は2010年10月01日~10月31日、調査対象は国内の証券取引所に上場する3,639社である(2010年04月01日以降のIPO銘柄は除外している)。

ディスクロージャ資料の開示状況

まずはIRサイト上の各種ディスクロージャ資料の掲載率を見てみよう。下の図1は、「決算短信」「有価証券報告書」「事業報告書(または株主通信)」「和文アニュアルレポート」、そしてプレゼンテーションに関する情報である「決算説明会資料」「説明会等の動画・音声配信」の掲載率を、2009年10月時点と2010年10月時点で比較したものである。

図1 各種ディスクロージャ資料のIRサイト掲載率

グラフからわかるとおり、各種ディスクロージャ資料の掲載率は概ね上昇している。なかでも有価証券報告書の掲載率が大きく上昇し、6割を超えてきた。有価証券報告書においては、役員報酬や株式保有状況の開示など、コーポレートガバナンスに関連する情報開示が強化され、その有用性が増したことが大きな要因ではないだろうか。

また、決算説明会(プレゼンテーション)資料の掲載率も改善している。新たに掲載を開始したサイトが散見された。なかには過去に休止していた説明会資料の掲載を再開したサイトもいくつか見られた(これはIR活動の一貫性の欠如ともいえるのだが)。決算説明会に関連するその他の情報では、Q&A(質疑応答)や発言内容のドキュメントを合わせて開示する積極的な企業もあるものの、いずれもほんの数%の開示にとどまっている。

株主総会、およびコーポレートガバナンス情報の開示状況

今回の調査で注目すべき点は、「株主総会」に関連する情報開示の進展である(図2)。

図2 株主総会、コーポレートガバナンス情報の掲載率

招集通知や決議通知など、株主総会に関する何らかの情報の掲載率は、2009年10月時点の30.3%から43.5%(うち招集通知をしっかりと掲載しているのは40%)へと飛躍的に上昇した。

ちなみに、IRサイト上に臨時報告書等で議決権行使結果を開示・掲載していることが確認できた企業は約2割にのぼっている。(前回調査時は臨時報告書による提出が義務づけられていなかったこともあるが)前回の掲載率が約1%だったことを考えると、飛躍的な改善である。

コーポレートガバナンスに関する情報開示も引き続き進展している。コーポレートガバナンスに関する説明を行うページを設けているサイトは17.7%へ、コーポレートガバナンス報告書を掲載しているサイトは21%へと、いずれも大きく上昇している。

まとめ

以上見てきたように、IRサイト上の情報開示そのものは、引き続き改善傾向にある。とくに、今回は制度的な要請も相まって、株主総会、およびコーポレートガバナンスに関連する情報開示が大きく進展していることが確認できた。

他方、掲載すべき情報の増加にIRサイトの情報構造が追いつかず(すなわち、ウェブサイトに適切な配置階層がなく)、更新情報一覧ページにしか情報(=リンク)が置かれていないというサイトがかなり多く見られた。株主総会の通知や議決権行使結果、コーポレートガバナンス報告書に多いようだ。最新情報のうちはよいが、これでは少し時間が経過するとリンク一覧表に埋没してしまう。こうなると、いよいよIRサイトの情報構造そのものを見直す必要があろう。

開示情報の追加とユーザビリティの維持は、今も昔も悩ましい問題である。