2010年6月24日
四半期ごとに発表される決算内容をより詳細に投資家に伝える電話会議や決算説明会。ここで使用されるスライドや補足資料を株主・投資家向け広報(IR)サイトに掲載して、すべての投資家に対して公平に情報を公開すること(フェア・ディスクローズ)がWeb IRの第一歩である。IRサイトでもっとも有益な情報のひとつであり、投資家に対する企業の情報開示姿勢を示すバロメータにもなる。
今回は、日本の主要企業500社が展開する英語IRサイトにおける「決算説明会/電話会議情報」の掲載状況を見てみることにしよう(今回も5月10日~21日にゴメスが実施した日経500採用企業を対象にした簡易調査を土台にしている)。下図はその結果である。英語による情報提供に消極的な企業がまだまだ多いように見受けられる。
まずは電話会議や説明会に用いたスライド資料の掲載状況をみてみると、57%の企業が英語サイトにも資料を掲載していることがわかる。ちなみに(2009年10月時点の類似サンプルデータではあるが)、日本語のIRサイトに説明会資料を掲載していた企業は実に82%にのぼっていた。
続いて、電話会議の音声や決算説明会の模様を配信する動画・音声配信の英語版を準備していた企業は、主要500社のうちの15%にとどまっている(同じく、日本語サイトは30%)。
これらは手間も費用もかかるコンテンツである分、企業間で取り組みに大きな差が出てしまっている印象だ。
そして、電話会議や説明会の発言を文章に起こしたTranscriptについてみてみよう。海外の主要企業サイトでは目にすることが多いコンテンツであり、近年は日本企業のIRサイトでも掲載されている光景がちらほら見られるようになってきたコンテンツだ。動画・音声配信では、ミーティングの内容をすべて把握するのに長時間閲覧しなければならない(長いものでは90分に及ぶものも!)。しかし、文面に起こしてあれば短時間で発言内容を把握することができるし、紙に印刷して持ち運ぶこともできる(iPadで閲覧できればより環境的だ)。時間の限られた投資家にとって有用なコンテンツである。
では、英語IRサイトにおける掲載状況はどうだろうか。残念ながらTranscriptの掲載は6%にとどまっている。また、電話会議や説明会で行われるアナリスト等との質疑応答(Q&A)を要約して掲載する企業も9%にすぎなかった。
文章起こしのコンテンツは、日本語のIRサイトでも掲載する企業はあまり多くない。ただ、掲載企業が増え始めつつあるのもまた事実。派手さこそないが、Web IRの地道な改善は続いている。