2010年6月3日
昨今、書店にはIFRS(国際財務報告基準)に関するさまざまな書籍が置かれ、雑誌やWebサイトでもIFRS特集が盛んに行われている。今後、国際的に整合的な会計基準であるIFRSが導入さるようになれば、業績や財務データの国際間比較が今よりもはるかに容易になるだろう。そして、外国人ユーザーが日本企業のIRサイトを今よりも参照し、利用するようになるかもしれない。
ここ数年で、日本企業の「日本語の」IRサイトは、使い勝手、情報量の両面から大きく進歩した。では、日本企業サイトでは、海外からのユーザーに対する会社情報やIR情報の提供、すなわち外国語(ここでは英語)による情報提供はどの程度なされているのであろうか。日本語同様、英語サイトのクオリティも高いのだろうか―。
このような問題意識に基づき、Gomezでは、日本の主要企業を対象に、英語によるIRサイトの現状を把握するための簡易調査を行った。調査期間は2010年5月10日~21日、調査対象サンプルは日経500指数採用の500社である。今回はその結果の一部を紹介したい。
下図は、英語サイトの有無、日本語サイトとグローバル(or英語)サイトのデザインの統一性、英語サイトのサイト内検索機能の有無についてまとめたものである。
まず、英語によるコーポレートサイトを構築している企業は94%にのぼっており、大部分の企業のWebサイトでは、英語による何らかの会社情報を提供している(というよりもむしろ、6%もの企業で英語サイトが見当たらないというべきかもしれないが…)。
次いで、日本語サイトと英語サイトにおいて、IRサイトを含むコーポレートサイトの基本デザイン(色彩やメニュー構造など)を統一して、日英双方、共通のフレームワークの下で情報提供している企業は73%であった。そして(英語サイトの見当たらない6%を差し引いた)残り21%の企業は、日本語と英語でサイトデザインが異なり、英語サイトのクオリティが劣後しているという状態にあった。
なお、サイト内検索の提供は51%にとどまっている。ちなみに、(サンプルや時期が微妙に異なるので厳密な比較はできないが)、ほぼ類似のサンプルによる2009年11月時点の「日本語サイト」におけるサイト内検索搭載率は75%であった。
それ以外にも、(一昔前によくあった)ページによってナビゲーションが変わって(あるいは消えて)しまう回遊性に乏しいサイトが未だに存在したり、英語IRサイトであるにもかかわらず日本語資料が掲載されていたり、英語サイトにおける株価情報のリンク先が日本語サイトであったりするなど、基本的な問題・欠陥を抱えたサイトが散見されることも付言しておこう。
国境を越えて資金が移動する現在にあって、国際的な共通言語である英語による会社情報やIR情報の提供は欠かせない。英語サイトが存在しないというのは論外としても、コーポレートサイトやIRサイトのような情報を提供するWebサイトのデザインやクオリティ、使い勝手が言語によって大きく異なる状態は、情報提供、あるいはウェブ・ブランディングの観点からも問題があり、今後の対応が必要であろう。