2009年11月6日
景気悪化と予算削減という逆風の中にあっても、インターネットを通じた情報開示を拡充させるために、コーポレートサイトやIRサイトをリニューアルする企業が予想以上に多く見られる。今回は、そんな環境下にあっても着実に改善が進んでいることが伺えるコンテンツの動向を追ってみよう。下図は、IRサイトにおける「個人投資家向けコンテンツ」「経営方針コンテンツ」「事業等のリスク」の各掲載割合の推移を示したものである。
近頃、「個人投資家の皆さまへ」という入り口を見かけるIRサイトが多くなってきたようだ。数字を見てみよう。個人投資家等への専用コンテンツの掲載割合は、今回の2009年調査では12.8%となっており、前回調査(9.3%)に比べて伸長している。「個人投資家を意識した」IRサイト作りが進展しつつあることが垣間見える。
なお、ここでいう専用コンテンツとは、個人投資家やはじめてIRサイトを訪れる投資家に向けた自己紹介コンテンツや情報振り分けページなどの総称である(詳細は、2009年7月2日のIRレポート「個人投資家ユーザーとどう向き合うか」に譲るので、興味がある方は参照いただきたい)。
「経営戦略」や「経営計画」というメニューを見かけるIRサイトも多くなってきた。今回の調査では、19.1%のIRサイトで経営方針関連のコンテンツが確認できた(前回は15.4%)。全体的に、IRサイトのリニューアルに合わせて新設されることが多くなっているようだ。
もっとも、数こそ増えてはいるものの、中身については千差万別である。中期経営計画で具体的な数値と行動計画にまで落とし込み、わかりやすく編集して説明する優れたIRサイト―このような優れたサイトでは、関連する説明会資料や動画メッセージも掲載され、詳細な内容まで知ることができることが多い―が出現している一方、単なるスローガン的な情報にとどまるサイトも多いのが現実だ。
あわせて、業績、あるいは計画達成のかく乱要因になりうる事業等のリスクに関する情報をIRサイト上に掲載する企業も―絶対数は少ないが―少しずつ増えている。
この情報は、有価証券報告書等に記載されているものであるが、PDF資料の奥底(!)に眠っているため、記載されていることを知らないユーザーは気が付かない可能性が高い。それをIRサイト上に掲載することで、見落としを避けつつ、業績変動に対する注意喚起の役割を果たすことが期待される。
以上見てきたように、個人投資家向けページや経営方針などを活用して、「何をしている企業なのか」「どこを目指すのか」という質的な情報を掲載するIRサイトが増加している―これらの情報は当該企業のIRサイトでしか手に入れることができない類のものでもある。
事業内容を知らずして決算情報を読み解くことはできないし、経営計画や方向性など、今後の展望に関する情報なくして将来の「果実」を期待する投資に踏み切る(あるいは保有を継続する)には勇気がいる。よって、株主・投資家が情報収集をするうえでの核となるIRサイトには、決算情報を含めた企業経営全般に関する情報が求められる。
昨今、このような情報が充実してきている事実は、IRサイトが単なる決算資料の倉庫から、経営実態全般を伝達する場へと進化しつつあることを示している。