2009年9月3日
定時株主総会開催日の分散化が進んでいる。東京証券取引所が発表した2009(平成21)年3月期の株主総会開催日集計を時系列で見ると、(今年は昨年より集中率がやや上昇しているものの)開催日分散化の傾向が一目瞭然である。株主が参加しやすい総会運営に向けた流れは続いているようだ。
実体のみならず、インターネット上においても、株主総会にアクセスしやすくなってきている。インターネットを通じた議決権投票はもちろんのこと、IRサイトでの株主総会に関する情報開示も進展している。(少し古いデータだが)2008年12月時点で、自社IRサイト上に召集通知等を掲載するサイトは約950社であった(ゴメス調べ)。2007年12月時点では約850社。つまり、IRサイトに株主総会情報を掲載する企業は、およそ1年間で100社ほど増加しているのだ。
サイト上に掲載される情報の内容も多彩になってきた。召集通知・決議通知に加え、定時総会や懇親会に参加できなかった株主のために、開催概要、プレゼン資料や発言要旨、質疑応答などを公開している親切なサイトも見られる。今や株主総会情報は、(量・質ともに)IRサイトの中でも改善が進んでいるコンテンツのひとつだ。
ところで、2009年の話題は「議決権行使の結果開示」であろう。株主との対話の促進や議決権行使のプロセス透明化等のために、さまざまな機関から結果開示に関する議論や要望が行われている。そのような中にあって、今年はWebサイト上に議決権行使の結果を開示している企業が30社近くになり、昨年よりも大幅に増加しているようだ。
ここでIRサイトに目を転じてみよう。これら情報の探しやすさにまで配慮されたサイトがある一方で、どこに置いてあるかわからないサイトも見受けられる。換言すれば、積極的な情報開示を行う企業の中にあっても、情報の探しやすさに対する配慮は二極化しているということだ。どういうことか。
端的に言ってしまえば、株主総会に関する情報が一か所に集約されているか否か、山積みの情報の中から欲しい情報をいちいち探す手間がないか、ということに尽きる。
優れたサイトには株主総会情報が集約されたページがあり、定時総会に関する情報を求めるユーザーは、そこにアクセスすれば、関連する情報をすべて得られるようになっている。他方、そのような「器」のないIRサイトでは、新着情報やトピックス欄に情報を置くのみである。最新のうちはよいが、時間の経過(すなわち新着情報の増加)とともにその情報は埋没してしまう。つまり、せっかくの情報が、短期間のうちに認知されなくなってしまう可能性が高い。
議決権投票の結果開示のような、有益かつ企業の情報開示に対する積極性や先進性を示す貴重な情報を埋没させないためにも、IRサイトの情報構造の見直しが必要であろう。
議決権行使結果以外では、議決権コンサルタントへの対応―反対投票推奨に対する反論や補足情報など―をIRサイト上で行う企業も現れている。情報不足等により議案に対する理解が得られなかった場合は、IRサイトの株主総会ページを活用して情報を補足する。これにより株主に企業の考え方を「正確に」伝え、理解を得、そして株主に議決権投票を促すことが期待される。
これは株主総会ページを通じた株主と企業のコミュニケーションが進展しつつあることを示す好例だ。「情報提供(情報収集)」によって「正確な理解」を得て、その結果として何らかの「行動」を促すという情報提供サイトの目的に鑑みれば、IRサイト(あるいは株主総会ページ)のこのような使い方は理にかなっているし、不特定多数の株主に情報を頒布するためにはきわめて効果的だ。
また、その行動の結果としての「決議」を伝える必要もある。多くのIRサイトでは決議通知が掲載されているが、今年は議決権行使の詳細な結果をも開示する企業が増えてきている事実を踏まえると、今後も株主総会ページの役割は大きくなっていくのであろう。