2009年6月1日
上場企業の株主・投資家向け情報サイト(以下、IRサイト)のクオリティの二極化が著しい。IRサイトに力を入れる企業の改善は進む一方で、そうでない企業のIRサイトは陳腐化する一方である。
ユーザーの大半はまずトップページを訪れるが、ここでIRページへの動線(入り口)が目に入るかどうかが問題となる。動線が目立たない位置にあったり、そもそもなかったりすると、ユーザーの不快指数は急騰してしまう(それ以前に、立ち去られてしまう可能性が高いが…)。IRトップページも同様だ。新着情報だけが延々と列挙されたものはその典型である。トップページは、IRサイトや個別の各IR情報へ適切にナビゲートされていなければならない。
これは言わずもがな。決算短信や有価証券報告書はもちろん、株主通信や決算説明会の配布資料などは最低限、掲載しなければならない。というよりも、これらがなければ、IRサイトとしての体をなさない。投資家が今までのIR活動の成果を確認できるようでなければ、そのIRサイトには何の意味があると言えようか。
PDF(Portable Document Format)は配布や保存などのメリットがあるが、ファイルが重い、立ち上がるまで時間がかかる、見にくい・読みにくいなどの理由で不満が多いのも事実である。このリンクがズラズラっと並んでいるだけのサイトは、あたかもダンボールだけが山積みにされた店舗のようなものだ。中身のわかりにくいダンボール(=ファイル)を開いて一つ一つチェックしなければならないようでは、ユーザーは辟易してしまうだろう。
ところで、昨今は積極的なIR活動を反映してIR資料の種類が増え続けている。また、四半期開示等の影響でIR資料掲載の増加スピードは増していくものと考えられる。このような状況において、IR資料が種類別や年度別に整理されず、PDFリンクだけが雑多に並べられたIRサイトでは、情報を探す労力だけが大きくなってしまう。例えPDF資料が主体であっても、せめて探しやすさへの配慮はほしい。
IRサイトに限らず、問い合わせ先や連絡先の記載がないサイトはユーザーに不安感を与える。サイト上にいざというときの「拠り所」がないからだ。IRサイトに関して言えば、単に情報を一方的に与えるだけでフィードバックを受け付けず、投資家を相手にする気がない企業だと思われてしまう危険性もある。結果的に、企業の投資家に対する対応姿勢が疑われかねない(もちろん、表記だけで連絡が取れないようでは論外であり、逆効果にすらなるが)。
実はこれがもっとも重要なのかもしれない。初めてIRサイトを訪れるユーザーにとって、「どんな会社なのか?」「何をしている企業なのか?」が重要な関心ごとである。将来を展望するための経営方針や経営計画も同様だ。企業の「過去、現在、未来」に関する情報が掲載されていなければ、投資家に企業の姿は伝わらないし、理解も進まない。何をしている会社かを知らずして、足元の業績やパフォーマンスをどうして評価できようか。また、強みやビジョン、目標や方向性を知らずして、貴重な資金で未来に向けた投資を行おうと思うだろうか。