2008年4月1日
2008年4月1日に発表した「IRサイトランキング2008」の優秀企業は101社となり、昨年の70社から大きく増加した(表1)。IRサイトに力を入れている企業が着実に増えていることが伺える。
業種 | 2007年3月調査 | 2008年3月調査 | 増減 |
---|---|---|---|
水産・農林業 | 0社 | 0社 | - |
鉱業 | 0社 | 0社 | - |
建設業 | 0社 | 0社 | - |
食料品 | 2社 | 3社 | +1社 |
繊維製品 | 1社 | 2社 | +1社 |
パルプ・紙 | 0社 | 0社 | - |
化学 | 2社 | 4社 | +2社 |
医薬品 | 3社 | 3社 | - |
石油・石炭製品 | 1社 | 3社 | +2社 |
ゴム製品 | 0社 | 0社 | - |
ガラス・土石製品 | 1社 | 1社 | - |
鉄鋼 | 0社 | 0社 | - |
非鉄金属 | 0社 | 2社 | +2社 |
金属製品 | 0社 | 0社 | - |
機械 | 1社 | 3社 | +2社 |
電気機器 | 15社 | 21社 | +6社 |
輸送用機器 | 6社 | 6社 | - |
精密機器 | 2社 | 2社 | - |
その他製品 | 1社 | 2社 | +1社 |
電気・ガス業 | 2社 | 2社 | - |
陸運業 | 1社 | 1社 | - |
海運業 | 1社 | 1社 | - |
空運業 | 0社 | 0社 | - |
倉庫・運輸関連業 | 0社 | 0社 | - |
情報・通信業 | 8社 | 12社 | +4社 |
卸売業 | 4社 | 5社 | +1社 |
小売業 | 1社 | 2社 | +1社 |
銀行業 | 5社 | 5社 | - |
証券・商品先物取引業 | 2社 | 2社 | - |
保険業 | 2社 | 3社 | +1社 |
その他金融業 | 3社 | 5社 | +2社 |
不動産業 | 1社 | 6社 | +5社 |
サービス業 | 5社 | 5社 | - |
合計 | 70社 | 101社 | +31社 |
最終ノミネート企業 | 743社 | 565社 | +35社 |
業種別で見ると、新規の選出企業が多い業界は、(1)電気機器6社、(2)不動産業5社、(3)情報・通信業4社となっている。電機機器、情報・通信業は、選出企業の絶対数も多い水準の高い業界であり(電気機器21社、情報・通信業12社)、優秀サイトが優秀サイトを呼ぶ循環ができているようだ。また、それ以外の業界でも、製造業を中心に幅広く新規IRサイト優秀企業が選出されており、今後も改善が期待される。
ところで、「IRサイトランキング」では、ノミネート用の基礎調査を行っている。最低限の水準を満たすIRサイトを選別するために、決算資料や説明会情報などのIRコンテンツ、IRに関する問い合わせ動線、事業内容や経営方針など、基本的なコンテンツや取り組みの有無を30程度の調査項目を用いて調査する。そこで一定水準を満たすIRサイトをノミネートし、最終調査(260項目)を行うわけだ。
2008年調査でこのノミネート調査を通過したIRサイトは778サイトであった。昨年比で35社の微増となっている。上場企業全体(約3,900社)で見れば、その数は決して多くない。換言すれば、ノミネートされる企業の顔ぶれは、大きく変わっていないということだ。しかし、最終ノミネート企業の平均スコアは全体的に伸びている。ここから、優れたIRサイトを持つ企業はよりハイレベルになり、力を入れていないサイトとの品質格差が広がり続けている現状が伺える。
次に、今調査期間におけるノミネートされた565社の全体的な傾向はどうなっているかを、平均スコアから探ってみよう(表2)。
2007年3月 全業種平均 |
2008年3月 全業種平均 |
増加幅 | 増加率 | |
---|---|---|---|---|
総合得点 | 4.48 | 4.73 | +0.25 | 5.63% |
ウェブサイトの使いやすさ | 5.76 | 6.00 | +0.24 | 4.12% |
企業財務・決算情報の充実度 | 4.31 | 4.47 | +0.16 | 3.86% |
経営組織・戦略情報の充実度 | 3.67 | 4.00 | +0.33 | 9.14% |
情報開示のきめこまかさ | 3.62 | 3.94 | +0.32 | 8.85% |
総合得点、ならびに4つのカテゴリすべてにおいて平均スコアが上昇している。カテゴリ別に分解してみると、「ウェブサイトの使いやすさ」と「企業財務・決算情報の充実度」に比べ、「経営組織・戦略情報の充実度」と「きめこまかな情報開示」の伸びが目立つ。この2カテゴリについて、少し吟味してみよう。
J-SOXに備え、「コーポレートガバナンス」や「内部統制」に関するコンテンツを追加してきたサイトが多かったことが、スコア上昇のひとつの要因だ。コンテンツの掲載方法は各社さまざまで、コーポレートガバナンス報告書だけを掲載する企業もあれば、ガバナンス体制を図入りで説明する企業もあり、情報セキュリティやコンプライアンス、リスク管理などをページ分けして詳細に伝える企業もあった。これらをすべて掲載する力の入ったサイトも見られるようになった。
いずれにせよ、今後の情報開示強化を見据えてサイトの上位階層メニューに「内部統制」や「コーポレートガバナンス」を置くサイトが増え、ガバナンス関連コンテンツが大きく追加・改善されている。
また、中期経営計画をはじめとする経営方針をサイト上で公開する企業も増えている。説明会情報(資料)を掲載する企業、経営方針のサマリー情報をHTMLに落とし込んで、読みやすい形に加工して掲載する企業など、全体的に目標や企業の将来像に関するコンテンツは増加傾向にある。
個人投資家向けの情報提供が増えていることが要因の一つである。個人投資家向け説明会を開催し、その模様をIRサイトに掲載する企業、あるいは、個人投資家や「はじめて訪れるユーザー」向けに、数多あるIR資料から重要な情報、特徴的な情報をピックアップし、わかりやすく編集して提供する企業など、多種多様だ。取り組みはさまざまだが、全体的に「企業やIR情報に詳しくないユーザー」にも配慮したサイト構築や改善が増えている。
また、動画配信や音声配信のようなストリーミング、あるいはRSS(Rich Site Summaryなど)による、Web技術を活用した情報配信機能の強化も引き続き行われている。
以上、組織、戦略の両面から、サイト上の「定性的な情報」が増え、ユーザーレベルに合せたコンテンツやインターネット技術を活用した情報提供などの改善が進んでいる。決算情報の伝達という基本レベルの情報開示から、よりわかりやすさやリッチさを求めたコンテンツへと、シフトしつつある現状が伺える。