2023年2月15日
近年のキャッシュレス決済の増加やデジタル田園都市国家構想に代表されるITを活用した地域創生の高まりを背景に、地域金融機関における顧客接点の窓口ともいえるウェブサイトはその役割の重要性をますます増しています。新しい生活様式の浸透により、金融機関のサービスも対面から非対面式にシフトしており、その結果ウェブサイトにおける信頼感や安心感、使い勝手の部分が利用者から求められることが多くなりました。
当社は2022年4月4日に「Gomez地方銀行サイトランキング2022(以下:地銀サイトランキング)」をGomezのウェブサイト(https://www.gomez.co.jp/)で公開しました。この調査対象は地方銀行・第二地方銀行のみでしたが、それ以外にも信用金庫、信用組合、労働金庫など他の金融機関も地域金融機関としての役割を担っており、そのウェブサイトや取り組みについても優秀な事例が見受けられます。
大きな注目点としては、オンライン完結型サービスの増加が挙げられ、来店不要のローン手続きは、オンライン完結型と既存の郵送や電話対応を含めて、ユーザー自身で選択できるようにタブ切り替えで用意するケースも多く見られました。
また、ヘルプやサポートのためのチャット機能の導入は年々増加し、ライフプランや各種ローンのシミュレーション機能も充実しています。オンラインセミナー等のウェブ上で実施されるサービスは、顧客とのコミュニケーションの効率化や利便性向上に加えて、非接触型サービスの新しいコンテンツとして普及していくことが期待されます。
信用金庫でも地方銀行と同様にウェブサイトに力を入れ始めており、スマートフォンやタブレットへの対応としてレスポンシブ化も進んでいます。利用者にとって使いやすく、便利なウェブサイトへ改修が最近の傾向です。
例えば多摩信用金庫ではウェブサイトに最初に訪れたときに、トップページにかぶせる形で「来店予約」の画面を必ず表示させ、利用者に来店予約をアピールしています。一見分かりづらい構成になっているように思えますが、来店予約の認知度や利用度を向上させるより利用者にとっても店舗で待たされることなく手続きができるようになるというメリットがあります。
主な画面では、利用者目線でユーザーインターフェイズも刷新されており、店舗・AMT情報や金利手数料など、主要コンテンツを上部配置するなど、使い勝手が高いウェブサイトとなっています。
一方、使い勝手の重要な要素であるサイト表示速度においてはトップページの表示に3秒以上かかるような遅い信用組合のウェブサイトも見受けられました。
2022年8月に全面リニューアルした中央労働金庫のウェブサイトは、全国に13ある労働金庫のなかでも特に優れた取り組みを行っています。労働金庫を利用できる人は主に労働組合や生協などの組合員の方が中心であるため、利用者に寄り添ったきめ細かな情報や機能が多く見受けられました。
文章や図解を用いることは、情報提供における有効な手段の一つとなりますが、文字量や図解の作り方次第で、ユーザーにストレスを与えかねません。
中央労働金庫の動画は「短い時間でどのように伝えるのか」という観点で、情報が凝縮されており、利用者(組合員)に負担をかけない気配りが見受けられます。
金融機関におけるDX化が進む中、サービス起点となるウェブサイトの役割は更に重要度を増しております。その中で、中央労働金庫のウェブサイトは来店不要のオンライン相談予約をはじめとする、主要サービスをグローバルナビゲーションに配置しており、階層構造も利便性に配慮され、利用者(組合員)ファーストであることが非対面であるウェブサイトから伝わる点が秀逸です。
一つ一つのカテゴリ内のコンテンツもメガメニューを活用するなど、非常にわかりやすく整理されており、アイコンを多用しながら各コンテンツ内容の理解を支援しつつ、自然と目的地へ誘導する点においてもウェブサイト利用時の高い利便性と安心感を醸造しています。
このように利用者(組合員)目線で取り組みを進める中央労働金庫のサイトを地銀サイトランキングと同じ軸で見てみると、若干の項目の違いはあれ「機能性・使いやすさ」が8.08点(第2位)に位置されるほど優れたサイトだということがわかります。
今後も金融機関におけるDX化が推進されていく中、給与のデジタル化やNISA恒久化など、生活に密着したサービスとして地域金融機関の役割は更に重要度を増すと思われるため、サービス起点となるウェブサイトが重要であることを改めて認識する時期が来ているのではないかと考えています。