2017年6月12日
国内の地方自治体が「地方創生」に取り組むなか、47都道府県が各々運営している公式サイトは、情報公開および情報発信の場として重要な役割を担っています。
ゴメスでは各都道府県サイトの状況を調査するとともに、インターネット行動ログ調査結果(株式会社ヴァリューズ調べ)の動向、サイト表示速度の動向などを分析しました。
ウェブサイトの使いやすさや情報量の面で、課題のある都道府県が多く見受けられました。
ウェブサイトのアクセス数と居住者人口数は必ずしも比例しておらず、人口数以上のアクセス数を稼いでいる都道府県もある一方で、人口が多いわりに閲覧されていない都道府県もあり、利用する側の立場に立ったウェブサイト作りへの取り組みが一層望まれる結果となりました。
都道府県サイトではおおむね下記のような情報が掲載されています。
どの都道府県も担っている役割は変わらないため、項目自体に大きな差はありませんが、行政情報の公開をメインとしている都道府県では、PCのウェブブラウザで表示させることのみを想定した『古いサイト』が多く、観光PRや広報活動に力を入れている都道府県には、スマートフォンやタブレット端末からの閲覧を意識したマルチデバイス対応された『新しいサイト』が多い傾向が見られました。
総務省の平成28年通信利用動向調査によると、平成27年のスマートフォン世帯保有72.0%と大幅に拡大しており、タブレット端末においても平成26年の26.3%から平成27年は7ポイント増の33.3%とスマートフォン同様に大きく伸長しています。今後ますます利用者の閲覧環境の多様化が進むことを想定し、どのデバイスにも最適な画面で閲覧できるマルチデバイス対応は重要です。
公共機関のウェブサイトのアクセシビリティに対して、総務省は「みんなの公共サイト運用ガイドライン」を発表しています。これは公的機関のホームページ等を誰もが利用しやすいものとするための制作支援を目的として、ウェブアクセシビリティのJIS規格 に規定されている内容に則って作成された手順書で、2017年にはこのガイドラインへの対応状況について調査が行われる予定になっています。
現在、多くの都道府県サイトで多言語案内やサイト内文字の読み上げ機能、ふりがな機能、閲覧支援ツールなどアクセシビリティ対応が進んでいます。
しかしこれが実際にきちんと機能しているか、必要とされる閲覧者にとって有効なものかという点では、疑問が残ります。
例えば、文字サイズの変更は、文字が画像化されていて拡大されなかったり、行間が詰まりすぎていて効果が表れないというケースが、いくつか見られました。
こういった問題点を抱えたウェブサイトは、そもそも誰が見ても見づらいページです。昨今需要の高いスマートフォンやタブレットでの操作には不向きな構成です。
ウェブサイトは、標準設定でも見やすいデザイン設計とアクセシビリティ対応が重要です。
各都道府県サイトのトップページのサイト表示速度を調査したところ、全都道府県サイトの平均応答時間は3.023秒で、他業界の国内サイトと比較すると速い結果になりました。しかし全サイトのうち17サイトにおいて、最小値と最大値の差が10秒以上あり、表示速度の安定性については課題が見受けられました。
上位サイト
順位 | 自治体名 | 表示速度 (秒) |
稼働率 (%) |
中央値 (秒) |
レンジ (秒) |
---|---|---|---|---|---|
1 |
大阪府 | 1.234 | 100 | 1.086 | 2.395 |
2 |
徳島県 | 1.253 | 100 | 1.130 | 1.484 |
3 |
静岡県 | 1.337 | 100 | 1.015 | 4.288 |
4 |
鳥取県 | 1.355 | 100 | 1.214 | 3.490 |
5 |
神奈川県 | 1.393 | 100 | 1.275 | 2.165 |
下位サイト
順位 | 自治体名 | 表示速度 (秒) |
稼働率 (%) |
中央値 (秒) |
レンジ (秒) |
---|---|---|---|---|---|
43 |
熊本県 | 4.751 | 100 | 4.720 | 2.860 |
44 |
福島県 | 5.904 | 100 | 4.885 | 30.728 |
45 |
佐賀県 | 5.970 | 100 | 3.999 | 44.671 |
46 |
宮城県 | 6.171 | 100 | 5.558 | 6.872 |
47 |
大分県 | 9.807 | 100 | 4.537 | 44.299 |
■計測条件
計測対象ページ:各都道府県PCサイトのトップページ
計測期間:2017年5月8日~2017年5月11日
計測間隔:60分に1回計測(1日24回の計測)
計測拠点:東京KDDI
計測終了条件:DocumentCompleteイベントの発生を待ち、
”READYSTATE_COMPLETE”を確認後、通信が発生しなくなるまで3秒間待機
インターネット行動ログ調査結果(株式会社ヴァリューズ調べ)によると、全国1位と2位の人口を抱える東京都と大阪府は、居住人口に対するサイト来訪者の比率は東京が34%、大阪が55%と低い結果になりました。その一方で、東京周辺の埼玉や千葉、観光地を抱える京都、奈良、長野などは人口よりもサイト来訪者数が多く、ウェブサイトの注目度が高いといった結果が見られました。
■インターネット行動ログ調査概要
株式会社ヴァリューズが保有する全国の行動ログモニター会員の協力により、2016年4月~2017月3月のPC・スマートフォンからのアクセス数を「eMark+」を用いて集計。
サイト訪問者数(推計)は該当サイトを訪問したユニークユーザー数で、ヴァリューズ保有モニタでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。
観光PRや広報活動に比重を置いた都道府県サイトは、トレンドを取り入れた魅力的なものになっていました。中でも神奈川県と埼玉県のウェブサイトは、デザインが先進的で、PR活動のみならず、行政情報の見やすさや探しやすさに配慮した取り組みがされており評価できます。
神奈川県は先進的なデザインに加え、大きな文字サイズで読みやすさに配慮しています。また利用者が目的のページにたどり着きやすいように、トップページへサイト内検索ボックスを大きく配置しています。
サイトの表示速度が速い点も評価できます。
埼玉県のウェブサイトは、明るいカラーで統一され親しみやすいデザインと使い勝手のよいナビゲーションバーが設置されていました。「総合トップ」「県民向けトップ」「事業者向けトップ」の3つの入り口を設けて利用者の閲覧しやすい工夫が施されています。
インターネット環境やデバイスの変化が著しい中で、作りっぱなしのウェブサイトはどんどん時代遅れになってしまいます。常に「利用者視点」に立って、使いやすく、かつ迷うことなく正確な情報を得られる事が求められます。
また、あらゆる閲覧環境にも対応できるようマルチデバイス化を進め、ウェブサイト全体のデザインの見直しやコンテンツの整理、ガイドラインの確認や実際の利用状況の確認を継続的に行っていくことが重要です。
(ゴメス・コンサルティング 森澤 正人)