2013年06月14日
2011年度よりはじまった教育研究活動等の情報公開に対する大学サイト上での対応が進んでいる。単純な情報(PDF)の掲載のみならず、階層化された論理的なメニュー構造とページ構成を実現したサイト、ビジュアルなどを活用して視覚的にもわかりやすいサイト、そして、基本データを活用しながら大学の特色を訴求するに至るサイトなど、取り組みとして興味深いサイトもそれなりに見られるようになってきた。その一方で、義務的にPDFのリンクを並べるだけのサイト、それ以前にPDFによる分厚い報告書をそのまま掲載しただけのサイトなど、利用者の視点が完全に欠落したものも散見される。
そこで今回のコラムでは、大学サイトランキングに先立って行われた基礎予選調査の結果を踏まえて、ウェブサイトにおける情報開示制度への対応状況を吟味する。
※今回実施した調査は、全国約780大学のうち、学生総数が一定水準以上の大学で、かつ(1)医学・歯学・薬学系、(2)保健・医療系、(3)美術・音楽・体育系以外の457校を対象としている(大学院大学も対象外としている)。調査期間は2013年5月下旬~6月上旬である。
まず、トップページからの誘導と教育情報公開ページの構築の状況を示したのが、以下のグラフである。
図 1 ウェブサイトにおける教育情報探索のための施策
サイト内検索機能を実装したサイトは調査対象全体の91%にのぼり、大多数のサイトでフリーワードによる情報探索への道を開いていることがうかがえる。トップページに教育情報公開ページへの導線をわかりやすく配置しているサイトは全体の64%であり、トップのトピックス領域やバナーを活用してユーザーへの認知を企図するサイトも多くあった。その一方で、導線・リンクのラベル(名称)がわかりにくい(リンク先が推測しにくい)ラベリング問題も随所に見られた。
そして教育情報公開に関する情報を集約したページを設けているサイトは対象全体の87%にのぼり、大部分の大学サイトでは情報公開への対応はひとまず完了していることがわかる。情報属性ごとに小見出しを入れて視認性を高めたり、関連リンクを活用して詳細情報への橋渡しをしたりして、情報の探しやすさへの配慮も行われているサイトが多い。さらに一部では、特設サイトの設置、あるいは、リンクの羅列ではなく論理的にメニューを階層化するなどした意欲的な大学サイトもあった。
しかしながら、全体的に情報源たるPDFファイルの扱いが極めて雑であり、リンク先がHTMLなのかPDFなのかわからない、PDFファイルであっても情報(リンク)によって同一ウィンドウで立ち上がったり別ウィンドウで立ち上がったりして一貫性を欠くなど、情報の取り扱いがきわめてお粗末で、利用者のフラストレーションをためるであろうサイトも多いのが現実だ。
次に、いくつかのコンテンツ掲載状況をいくつかピックアップしたものが、以下のグラフである。
図2 各種教育情報のウェブサイトへの掲載状況
※なお、1年以上更新がないもの、探しやすさへの配慮がないものなどは「掲載なし」と判断している。
教員数、学生数のような基本的なデータは、ほぼすべての大学サイトに掲載されている。中退者等の開示は27%程度であった。PDFによる開示が半数近くであるが、情報の掲載率自体は高い水準である。また、就職や入試に関する統計についても概ね70~80%のサイトで開示され、受験生の大学選びなどに活用できるようになっている。
そして、ここで掲載された数字やデータを活用しながら大学の特徴や強みの訴求へと昇華させている大学サイトもいくつか見られるようになった。情報開示の次の段階へと駒を進め始めた先進的な大学サイトの今後の動向も気になるところだ。