「Gomez IRサイトランキング」は、上場企業がインターネット上で株主・投資家向け広報活動(以下、IR)を行うためのウェブサイトの使いやすさや情報の充実度を評価することを目的として実施されています。
調査概要は、以下のとおりです。
2023年9月1日~2023年11月30日まで
(ランキングデータは、2023年10月1日までのものを反映しています)
上場企業が自社サイト上で公開するIR情報を調査します。
「Gomez IRサイトランキング」では、IR情報を財務・決算情報や決算説明会に関するコンテンツのみならず、経営戦略、コーポレートガバナンス、環境や社会に対する活動、そして各種リリースなど、経営にかかわるすべての情報を包含する広義の概念としてとらえます。
そのため、いわゆる「株主・投資家情報サイト」に加え、会社情報に関するサイト、CSR(企業の社会的責任)に関するサイトなども調査の対象としています。
(採用サイトや商用サイト、製品・ブランドサイトなどは調査の対象としていません)
「Gomez IRサイトランキング」は、一定水準以上のクオリティを持つIRサイトのみを評価の対象とするために、予備選考方式を採用しています。ノミネート方法からランキング決定までの流れは、以下のとおりです。
2023年10月1日時点における日本国内の上場企業をノミネート調査の対象とします。
2023年調査では、3,832社が調査の対象となりました。
上記の条件を満たす全上場企業のIRサイトを対象に、予備選考調査を実施します。調査は、IRサイトに最低限掲載すべきコンテンツなど、12項目のチェックリストにもとづいて行われ、そのうち一定基準を満たす企業を最終選考にノミネートします。
2023年調査では、384社が最終選考にノミネートされました。
最終選考にノミネートされた企業のウェブサイトを、ユーザーの視点にもとづいて設定された231の調査項目に基づいて、当社アナリストが実際にウェブサイトを操作して評価をします。この調査項目は、以下の4つのカテゴリから構成されています。
・ウェブサイトの使いやすさ
・財務・決算情報の充実度
・企業・経営情報の充実度
・情報開示の積極性・先進性
これらの視点からそれぞれ評価を行い、ユーザーにとっての重要度(ウェイト)を加味して各カテゴリのスコアを算出し、総合得点を集計したうえで総合ランキングを決定します。
総合得点が6.00点以上の企業を「IRサイト優秀企業」として選定しています。その際、総合得点8.00以上の企業を「IRサイト優秀企業:金賞」、同7.00~7.99を「IRサイト優秀企業:銀賞」、同6.00~6.99を「IRサイト優秀企業:銅賞」として、選定いたします。
「Gomez IRサイトランキング」では、各社ウェブサイトの特徴(強み・弱み等)を明確にすることを目的として、カテゴリごとのスコアを集計した「カテゴリ・ランキング」を発表しています。
2023年調査における各カテゴリの主な特徴と評価軸、配点状況は、以下のようになっています。
IR情報を提供するウェブサイト全体のユーザビリティを評価するカテゴリです。情報の見つけやすさや各コンテンツの見やすさ・使いやすさ、ウェブ・アクセシビリティ基準への対応状況等を総合的に評価します。具体的には、以下の5つの領域から評価を行います。
・メニューとナビゲーション
・デザインとアクセシビリティ
・情報検索機能
・サイトの表示速度
・PDFファイルの使いやすさ
財務や決算に関する情報量を評価するカテゴリです。ウェブサイト上に掲載されたディスクロージャー資料や説明会情報など、主に業績を中心とする定量的な情報の充実度を総合的に評価します。具体的には、以下の5つの領域から評価を行います。
・決算概況と業績ハイライト
・ディスクロージャー資料
・決算イベントとプレゼンテーション
・株価と株主還元
・株式手続きと債券情報
企業や経営に関する情報量を評価するカテゴリです。会社情報、経営戦略、コーポレートガバナンスやCSRなど、企業に関する定性的な情報の充実度を総合的に評価します。具体的には、以下の5つの領域から評価を行います。
・会社情報と沿革
・取締役とガバナンス情報
・事業内容と経営戦略
・サステナビリティへの取り組み
・規約とポリシー
基本情報の一歩先を進んだ情報開示を評価するカテゴリです。個人投資家向け情報や英語による情報開示などのコンテンツ面、動画・音声配信、ソーシャルメディア、スマートフォン対応などの機能面の両面から評価します。具体的には、以下の5つの領域から評価を行います。
・英語による情報開示
・動画とソーシャルメディア
・ニュースリリースと問い合わせ
・マルチデバイス対応
・個人投資家への情報発信
評価結果は「総合ランキング」「カテゴリ・ランキング」に加え、33業種ごとの「業種別ランキング」を公表します。
「Gomez IRサイトランキング」は「IRサイト…」と銘打っていますが、その調査範囲は、いわゆる「株主・投資家向け広報(IR)」サイトに限りません。各種のディスクロージャ資料、業績のハイライトやレビュー、経営戦略、コーポレートガバナンスなど、投資に不可欠な情報に加え、会社やビジネス、環境・社会活動(CSR)、ニュースリリースに関する情報をも包含しています。すなわち、「企業の姿」を投資家に伝えるためのすべての情報を調査対象としており、IRサイトを中心とした「投資家から見たコーポレートサイト全体の評価」とでもいうべきものになっています。
GomezはIRサイトランキング立ち上げ当初から、このような方針に基づいて評価を行っています。なぜでしょうか。それは、IRサイトのメインユーザーたる投資家の属性や価値観、投資の評価軸の多様化により、IRサイトのみならず、CSRサイトなども含めた「コーポレートサイト全体の情報」が、投資や企業評価に必要とされると考えるからです。
かつてのIRサイトは、機関投資家やアナリスト向けのディスクロージャ資料の「書庫」としての役割しか持ちませんでした。その後、個人投資家の台頭により、事業内容や経営に明るくないユーザーが増え、「そもそも何をしている会社なのか?」、あるいは「ビジネスの特徴や強み・弱みは何か?」など、会社やビジネスに関する情報も必要とされるようになり、IRサイトに求められる役割も変わりました。そして昨今、財務諸表に現れない無形資産への関心の高まり、あるいは、環境・社会・ガバナンスの観点から銘柄選定を行うESG投資など、財務指標以外の新たな切り口と評価軸で企業分析を行う方向にも進みつつあり、投資家が求める情報はどんどん幅広くなってきています。
したがって、インターネットによる株主・投資家向け広報活動(ウェブIR)は、株主・投資家向け広報サイトのみならず、最新情報を伝えるニュースリリースはもちろん、会社情報やCSR情報などを含めた、より広義の概念として位置づけられる必要があると考えます。そしてこれが、冒頭に述べた「IRサイトを核としながら、広義の概念としてのウェブIRの中心となる「(投資家から見た)コーポレートサイト」を評価する」というスタンスを取っている理由でもあります。
「Gomez IRサイトランキング」の評価の第一義は、ウェブサイトの「ユーザビリティ」にあります。情報はユーザーに認知されてはじめて意味を持ちます。必要とされる情報がなければウェブサイトに価値はありませんが、さりとてウェブサイト上にいくら情報があったところで、それが探しにくかったり、使いにくかったりして、ユーザーが情報を見つけることができなければ、それは情報としての価値を持ちません。もちろん、情報提供の結果として期待される「ユーザーのアクション(行動)」など、望むべくもありません。
このような問題意識から、GomezのIRサイトランキング評価では、IRサイトに対し、以下の3つの根源的な問いかけを発します。(1)ウェブサイト上にユーザーが求める情報が掲載され、それを欲しいときに手に入れることができるかどうか。(2)情報が探しやすく、それを容易に手に入れることができるかどうか。そして、(3)プロの投資家のみならず、専門知識に明るくない個人投資家でも情報がわかりやすく、不快感なく業績や経営・ビジネスを理解できるかどうか。
換言すれば、情報の開示と掲載、情報が探しやすい情報構造と動線の設計、そして、情報をわかりやすく伝えるための情報の編集力という3点セットが、ユーザーたる投資家が各々の目的を容易に達成できる、高いユーザビリティを持ったIRサイト実現のための条件となります。そしてそれが投資家の関心を呼び、投資判断とアクション(買う、売る、保有する、など)を喚起できる、優れたIRサイトになり得るのです。ディスクロージャ情報をただ掲載するだけでは、ダメなのです。
ここ数年、IRサイトを中心とした各社のウェブIR活動の改善は、目覚しいものがあります。IR担当者、ウェブサイト担当者の英知と努力が結実した結果だといえましょう。このような優れたIRサイトを表彰し、広く社会に伝えたい―。これからさらにIRサイトを改善しようとする企業の担当者様には、現在の自社サイトの位置付けを確認し、充分な点・手薄な点を確認するための指標(ベンチマーク)を提供したい―。
「Gomez IRサイトランキング」は、そんな想いから出発しています。
2023年12月
ゴメス・コンサルティング事業部